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東京高等裁判所 昭和26年(う)2966号 判決

控訴人 被告人 米本留吉

弁護人 柴田次郎

検察官 野本良平関与

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人柴田次郎の控訴理由は、末尾に添附する控訴趣意書と題する書面に記載するとおりである。

次に、めん類及びパンが食糧管理法第二条に規定する、いわゆる主要食糧であることは食糧管理法施行令第一条の規定を俟つて初めて知り得るものであることは所論のとおりであるが、有罪判決において示すべき適用法律とは、処罰の根拠たるべき法規を指すのであつて、本件のごとき主要食糧の配給に関し不実の申告をしてその配給を受けた所為を処罰するための根拠たる法規は食糧緊急措置令第一〇条であつて、右食糧管理法施行令第一条のごとき、主要食糧の何であるかを定めた法規のようなものは包含されない。だから原判決が被告人に対する有罪判決において適用法律を示すに当り、所論のごとく唯食糧緊急措置令第一〇条のみを掲げて、右食糧管理法施行令第一条を挙示しなくとも、以て理由不備の違法ありとすべき筋合ではない。従つて論旨第二点も亦理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 中野保雄 判事 尾後貫荘太郎 判事 渡辺好人)

控訴趣意

原判決は判決に理由を附さない違法がある。原判決は其の別紙に不正受配一覧表を引用し其の量品種を明らかにしているが、判示に於ては単に「合計米換算云々量」とのみ判示している。被告人が受配した品種を一覧表に依て見ると右一覧表中には米麦等は勿論食糧緊急措置令第十条及食糧管理法第二条の主要食糧である事は明らかであるが「めん類パン」等は右条項から当然には主食である事は明らかでない。即ち食糧管理法施行令第一条を引用して始めて主食である事が分る。然らば食糧管理法施行令第一条を引用せず漫然判決に「米換算云々」と表示した事は理由を附さない違法である事明らかである。この点についても名古屋高等裁判所は昭和二十五年三月一日言渡の判決(高等裁判所判例特報七号四一頁)に於て本弁護人の見解と同一の見解をとつている。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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